前のエントリまではVbをベース電圧にしていたがざわざわ説明に合わせるため今回からはVbを合成抵抗にかかる電圧、Vをベース電圧とする。
こちら
エミッタ帰還(電流帰還)バイアス回路
の意味。たぶん解釈合ってると思う。こちら
負帰還回路の考え方(電圧帰還・直列注入形の例)
の説明も一部取り入れてる。
これがテブナンの法則によりこんな等価回路に置き換えられる。
V=Vb-RbIb
Ie=Ib+Ic=Ib+βIb=(1+β)Ib ---(A)
また
V=Ve+Vbe=ReIe+Vbeなので
Ib=(Vb-V)/Rb=(Vb-ReIe-Vbe)/Rb ---(B)
この(A)と(B)がそれぞれブロック図の次の個所となる。
この図は入力がVb, 出力がIeで、Vbは一定値なので一定値を入力する回路のブロック図となる。
Vbはただの定数R2/(R1+R2)Vccで、Vbeもほぼ定数0.6なのでなんとなくまとめたい気分なので入力をVb-Vbeとしてやる。また2つのゲインをまとめている。
ここで負帰還の話になって、負帰還の開ループゲインをA, 戻ってくる時のゲイン(名前ある?)をHとすると
閉ループゲインout/inはout/in=A/(1+AH)となる。AH>>1の時≒A/AH=1/Hとなり、開ループゲインAに依存しなくなる。これを先程のブロック図にあてはめ、in=Vb-Vbe, out=Ie, A=(1+β)/Rb, H=Re
Ie/(Vb-Vbe)≒1/Re (1+β)Re/Rb>>1の時
となり、Vb-Vbeは定数で閉ループゲイン1/Reも定数なので出力コレクタ電流Ieはトランジスタの増幅率βによらず一定となる。
おしまい。
ここから考察。解説にはそれ以外にR1, R2に流す電流をIbよりも大きくしてベース電圧を一定にすることが書かれている。そういうR1, R2, Reの組み合わせが実際に取れるかなんだけど、これはR1, R2をどんどん小さくすると電流が多く流れ、(1+β)Re/Rbは大きくなっていくので大丈夫(電力消費とかは考えない)。(1+β)Re/Rbを大きくすること(ループゲインを考えると上記の理由によりコレクタ電流が一定になることがわかる)、R1, R2に流す電流をIbよりも大きくすること(ベース電流が一定になるからそのβ倍であるコレクタ電流が一定になることがわかる)が本質的に同じである気がするんだけどどうだろう?うまく証明できない。回路設計には必要ないけど気になる。
追記:ここの最後に書いた元々の疑問が、負帰還の考え「ベース電流が増えるとエミッタ電流が増え、Reの電圧降下が大きくなって+0.6したベース電圧が上がりVccからの電流供給が減ってベース電流が下がる」というのはわかるけどその電流の量は誰が決定するん?ベース電流が気まぐれを起こしてもっと増えたろ、と思った時に本当にR1,R2で抑制できるのか、その条件は?というところだったんでやはりループゲイン考えないといけない、本質的に異なる気がする。
・・・更に考察。
上の2番目の図、テブナンの法則による等価回路を見ると、ベース電流がΔIb増えた時のRbによるベース電圧の上昇はRbΔIb, コレクタの方は電流は(1+β)ΔIb増えるから電圧上昇はRe(1+β)ΔIb、同じだけ電流が上昇した時のベース電圧とコレクタ電圧の上昇率の差は(1+β)Re/Rb。普通の回路だと
(端子AとBのどちらが電圧決定権を持っているかの話だけなので電源はどこにあっても可)端子A, Bを繋いだ時の電圧はAとBのインピーダンスの違いによって決定され、それは同じ電流が流れた時の電圧上昇率の違いである(電圧上昇率が小さい方が支配的、ふらふらしてピーキーな方が安定している方に引っ張られる)けど同じ考えをするとVbe=0.6を無視して仮想的にエミッタ側のインピーダンスReがβ倍される。なので仮想的なインピーダンスの比(1+β)Re/Rbが十分大きくないといけない。これが(1+β)Re/Rbの直観的な説明か。
てことで結論、インピーダンス比を上げるという意味で本質的に同じだった :)
コレクタ電流ちょっとあげると電圧上昇率(1+β)ReによってVccすぐに超えちゃうよね、という考えから思いついたこと。
すっきりしたー。
設計時に考慮すること(たぶんほんの一部)
Re決定時に考慮すること:
- 出力電圧Vcの最大振幅を大きくとる
- 動作点IcによるReの電圧降下によりVeがVccを超えないようにする
- (1+β)Re/Rb>>1
R1, R2決定時に考慮すること:
- ベース電流よりもR1、R2に多く電流を流す、つまりVcc/R>>Ic/β
- (1+β)Re/Rb>>1